スマホの進化、普及とともに「ながら運転」は増加し、交通事故も増加した。そのため、令和元年12月、警察庁は「ながら運転」の罰則を強化した。そして1年半後、「罰則強化により「ながら運転」による事故は半減した」と発表した。
そんなはずはない。罰則強化により、一時的な効果は認められるものの、半減したのではない。統計値が半減しただけだ。
統計値とは、この場合、事故の原因について取り調べを行い、ドライバーが事故の原因について(正直に)「ながら運転」であったことを認めれば「ながら運転」として計上される。しかし、「ながら運転」をしないよう上司・会社から指導されていたドライバーが「うっかりよそ見をしていました」と嘘を供述すれば、それは「ながら運転」として計上されない。
つまり、統計値の半減とは、現実の「ながら運転」が半減したのではない。罰則強化と「ながら運転」に対する社会的な評価、会社の指導などにより、半分のドライバーが嘘をつくようになったという現実のことである。
警察庁(国)は統計値で施策評価するため、それは間違いではないが、それは現実ではない。
その結果、令和元年に105件だった死亡・重傷事故件数は、令和5年には122件になったが、令和5年中の事故加害者の半分が嘘をついていると仮定すれば、実数はその倍の約250件となる。つまり、法改正施行後に増加したのは16%ではなく、実際には倍増、138%も増加したと考えることができる。
罰則の強化だけで、事故防止という課題は解決しない。事故防止という課題は、ドライバーの意識を変えることが必要なのであり、そのために私たちに何ができるのか、何を伝えるべきなのかを考えなければならない。
「ながら運転」について、こんな質問を受けることがある。
① 停車中は、スマホやってもいいですよね?
② ハンズフリーの電話は、罰則がないですよね?
確かに、停車中のスマホの使用、ハンズフリーでの電話について罰則はなく、検挙されることはない。しかし、と、私は必ず付け加えている。
「そんなこと言ってるから、事故するんです!」
(以下、次号)